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interview 卒業設計×山田健太朗


気になるあの人へインタビュー Various Voice

第2回目となるtonicaVvは昨年のせんだいデザインリーグで得票数一位(ファイナリスト補欠)やデザインレビューで西沢大良賞、JIA全国卒業設計コンクール2010で銅賞受賞など数々の賞を受賞した北九州市立大学大学院の山田健太朗君へインタビューを行いました。

聞き手=穴井健一

これから全国で卒業設計シーズンが始まるわけですが、自身の経験を通して、 これから頑張る後輩たちへ向けてのアドバイスなどをお伺いしました。

穴井|まず山田くんの卒業設計の内容についてですが、どのような作品を制作したのでしょうか?

山田|端的に言うと敷地は自分の地元(大分県佐伯市)で街の中心に城跡があります。その城跡に市民のそれぞれの為の部屋をつくりました。それは個人や家族のような集団があって、そのような単位で部屋を積層させて城みたいな塊を創りました。それは普段生活する住居とは違って、セカンドハウス、別荘のようなものとしています。部屋ごとに隙間を設けて人が通れる隙間、通れない隙間を設けました。そして、それぞれの隙間に動線を確保しました。なんでやったかというと普通に考えたら誰とも会わない場所なので現代の一般的に言われているコミュニティの考え方からするとある種、真逆のことかもしれません。しかし城はここの市民にとって圧倒的な存在感をもったもので、それを利用できるのではないかと思いました。城という場所で誰にも会わないことで、その城が自分の場所だと意識が芽生えるのではないかと思いました。

穴井|山田君の卒業設計では出身地である大分県が対象敷地となっていますがそこに対して何か特別な思い入れはあったのでしょうか?

山田|卒業設計を誰しもが地元でやりたいと思うんじゃないでしょうか?最初のきっかけとして深い意味は特にありません。結果的に自分のやりたい事と、自分の出身地に城跡があったこととが一致したのではないかと思っています。それが功を奏したと思います。

穴井|山田くんの卒業設計の内容を伺っていると、コミュニティという言葉が作品を表現する上でとてもキーワードではないかと思いました。何かコミュニティに関して特別な考えはあったのでしょうか?その経緯があればお願いします。

山田|コミュニティという言葉をよく耳にしていて、じゃあコミュニティはどうやってできるのか?またコミュニティとは何か?という疑問がありました。いろんな本を読んだりすると様々な解釈があり定義が難しかったので自分なりに定義しようと思った事がきっかけだと思います。自分の考えたコミュニティの定義は共通の意識と場所をもった二人以上の集団だと定義しました。そこで自分の身の回りの建築を見るとオープンスペースをつくって共有の場所をつくっている建築はとても多く目にしていて、そのような空間はいいと思ったけど、そういった場所に共通の意識があるのか?ということが疑問でした。そこで建築としてハードな部分をつくるけどそこに意識がないとコミュニティはできないと思いました。意識がそこになければコミュニティはできないと思って、別の意識の創り方があるのではないのかと思いました。無意識的にコミュニティを創ることを卒業設計で実験的にやってみようと思いました。

穴井|卒業設計をやっているときの周囲の様子(社会の風潮、学内外の流行りなど)はどのように感じていましたか?

山田|卒業設計だけに限らず学生の多くはせんだいのオフィシャルブックのようなデータベースを僕も含めて見ている人が多かったように思います・・・。それが良い悪いとは思いませんが、せんだいデザインリーグ2010の審査員長の建築家・隈研吾さんがせんだいのオフィシャルブックの総評で言われていたのは現代は情報が入ってきやすくて、データベース化されているので、見やすくなった。なので卒業設計がインスタントな全体性を生み出していると批評されていました。それは確かにと思いました。

穴井|では山田君が所属していた北九州市立大学の卒業設計シーズンはどのような雰囲気でしたか?

山田|それなりにみんな楽しんでいたと思います。北九州市立大学は後輩が手伝ってくれるという伝統が最近ではあるので、卒業設計をやっている当人は後輩に多くの事を学んでもらう事や、できるだけ楽しんでもらう事を第一に努力していたと思います。後半はみんな疲れていましたけどね。(穴井・山田 笑)

穴井|北九州市立大学では卒業設計の講評会が毎年行われていますが、大学内では山田君の作品はどのような評価を受けましたか?

山田|学内では自分は全く評価されませんでした。卒業設計の評価基準は様々だと思いますが北九州市立大学は完成度が一番の評価基準なのではないでしょうか?それに加えて作品の内容が明確であること、普遍的で理解可能であるかということに評価の重きがあるように思います。自分は学内講評会のときには何を言っているのかよくわからないという評価でした。

穴井|完成度や明確さが評価の大きな基準とされている北九州市立大学ではどのような人が卒業設計を審査されるのでしょうか?

山田|大学内の意匠系の先生が4人と普段、設計製図の授業で非常勤でこられている学外の先生3人によって講評会が行われています。

穴井|建築は意匠だけでなく設備や構造、材料など多角的な視点のもと審査がされてもいいのではないかと思っています。審査員のなかにはそのような設備や構造、材料などの審査員の方はいらっしゃらないのですか?

山田|審査員としてはいません。講評会には自由に聞きに来るだけです。

穴井|現在では卒業設計展が日本国内ではある種のブームになってきています。山田君も国内の様々な卒業設計展に出展してきて数々の賞を受賞されてきています。大学外の卒業設計展ではどのような評価を受けたのでしょうか?

山田|せんだいデザインリーグ2010(仙台)では得票はある程度あったものの、結局プレゼンテ―ションができませんでした。なので、自分自身の作品が一体どう評価されたか、本当に理解していただけたのかは、わかりません。やはりプレゼンテ―ションまでやって評価を受けたかったですね。 デザインレビュー2010(福岡)では審査員の建築家・西沢大良さんから評価していただきましたが、やはり密度がありすぎて、そこには住めないと言われました。しかし空間としては新しい可能性があると言っていただきました。 JIA(東京)では基本的に指摘されることは一緒で、住環境として成り立っていないと言われました。審査員の一人である建築家・平田晃久さんは、自分の考えていた事をよく理解してくれて評価していただきました。大きな場所を共有しながらも、誰とも接触しないことで無意識をつくるという図式は面白いと言われました。逆にすべての講評会で批判されたことは住環境として成立していないという事でした。

穴井|現在は北九州市立大学大学院へと進学されているわけですが、卒業設計を実際に終えて、やっておけばよかったと思う改善点のようなものはありますか?

山田|スケジュールとしては考える時間は初めからしっかりと設けていましたが、作業する時間が足りませんでした。自分の場合は動線の操作に時間をかけたのでもっと密度を減らしていれば完成度が高く、破綻せずにつくれたのではないかと思います。

穴井|卒業設計を終えた今どのような事を考えていますか?

山田|現代人の考え方、価値観は多様化してますが、裏側には意外と共通している部分もあるのではないか?と思っています。それを表出させるようなことを建築でできないかと今は考えています。たとえばこの卒業設計のように混ざらないことが混ざることを誘発するのではないでしょうか?人の既成概念を覆すような、人がムーブメントを起こすためのきっかけとなるような建築を創りたいと考えています。

穴井|現在考えていることも踏まえて、これからの展望があれば教えてください。

山田|とりあえず、まだ自分の価値観が凝り固まっているので、いろんな人と話して、自分の価値観をほぐし、話の中で共感できる事をいろいろ探っていきたいと思います。

穴井|最後に、これから卒業設計シーズンが始まるわけですが、これから頑張ろうとしている後輩へアドバイスよろしくお願いします。

山田|よく言われるのは「せんだいデザインリーグ」で上位に入ることや、学内でいい評価をもらうのは卒業設計をするうえで趣旨が違うとか、矛盾しているとかよく言われるけど、僕はそれはもっと持っていいんじゃないかと思います。デザインレビュー2010(福岡)で審査員の一人であった建築家・小嶋一浩さんが仰っていたのは 卒業設計は石を遠くに投げてそれを取りにいく作業だとおっしゃっていました。僕はそれにすごく納得しました。それと同じ意味で勝ちたいと自分が思うことは石をなげること。その直線状に自分のやりたい事、卒業設計があると思います。そういう帰納的な方法が僕は建築らしいいんじゃないかと思います。あと、先生、友人、先輩など周りの人に絶対エスキースをしてもらうべきだと思います。その中で先生や周囲に何を言われようとも、これだけは譲れないという部分は絶対に譲らないことが大事だと思います。自分が勝つためには自分のやりたい事をやり通さなければ結局勝てないんじゃないかと思います。だから勝ちたいという意思は持つべきと思います。あとは卒業設計に限らず建築は一人ではできないと思うので、もっと卒業設計をいろんな人に話して議論して、自分の考えで「これだけは譲れない」という点をもって議論を重ねていけば強固なものになるのではないでしょうか?

穴井|ありがとうございました。

山田|ありがとうございました。

—————————————————————————————————————————— ■ 山田健太朗 プロフィール

■ 経歴 1986 大分県佐伯市生まれ 2006 北九州市立大学国際環境工学部環境空間デザイン学科入学 2010 同大学院国際環境国学研究科建築デザインコース入学・在籍中

■ 受賞歴 2009 日本建築学会設計競技「アーバン・フィジックスの構想」  タジマ奨励賞※ 2009 主張する店デザインコンペ                    特別賞※ 2010 せんだいデザインリーグ2010                  得票数1位(ファイナリスト補欠) 2010 Design Review2010   JIA九州学生設計選奨 2010 Design Review2010                      西沢大良 賞 2010 日本建築学会設計競技「大きな自然に呼応する建築」    支部入選※ 2010 JIA全国学生卒業設計コンクール2010             銅賞

※は共同設計


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