interview 永山祐子氏
![](https://static.wixstatic.com/media/bfca42_8da018dd68ac4e8bba9e8ed4d352ca3d~mv2.jpg/v1/fill/w_300,h_228,al_c,q_80,enc_auto/bfca42_8da018dd68ac4e8bba9e8ed4d352ca3d~mv2.jpg)
気になるあの人へインタビュー Various Voice
第一回目となるtonicaVvは建築家、永山祐子さんをお迎えしました。
聞き手=穴井健一・藤崎琢磨
北九州に普段は住んでいない方から北九州はどのようなイメージをもたれるのか?そういったことを中心にお伺いしました。
穴井|今回の西日本工業大学で行われた「デザイン・建築の現在」のレクチャーの中で、永山さんは数多くの自作に対して光への解釈を必ずご説明されていて、そこから永山さんが生み出す建築のアイデンティティのようなものを感じました。やはり普段から光について考えているのでしょうか?またご自身の経験のなかで光とはどういった要素なのでしょうか?
永山|はっきりと、これ!とは覚えてないけど、たとえば少し曇った日に雲の間から光がフワーとはいってきたとき、次第に晴れてきて雲の立体感が現れたとき、そこに幼い頃、勝手に神聖なものを感じていました。そうやって考えていくとヨーロッパの教会もそうだけど光は人の精神にすごく何かしら影響を与えている。教会建築は完全にサブリミリナル的な効果をもっていて、すごく明るい場所から真っ暗な場所へいきなり行ったり、バラ窓から入ってくる光だったり。勝手に神を感じるシステムが建築そこにある。 あと日本はよく言われるように、明暗がわりとやんわりと変わる。光がグラデーション状に変わっていく。何かシチュエーションを感じるときに光の要素があった気がした。だから壁、床、天井という物質以上に光が空間をつくる大きな要素だと思う。
穴井|そんな光に対してこだわりのある永山さんは本日、初めて来られた北九州はどんな光がありましたか?光という視点で見た北九州の印象を教えてください。
永山|今日は黄砂だったんですよね。飛行場から降りてきてすごく曇っていた。 それが黄砂だとわかって不思議だった。
穴井|東京ではあまりないのですか?
永山|黄砂はふつう春じゃない?ちょっとおかしいなと思った。
そのとき薄靄(うすもや)の中に、その曇り空とかすかな山が良かった。それが逆に美しいと思った。そこに変な奥行きを感じた。それが今日の北九州の光の状態だった。
穴井|北九州といえば私は工場というイメージがとても強いと感じています。今日は工場は見学されましたか?どのような印象だったのでしょうか?
永山|やっぱり山や工場や橋などヒューマンスケールを超えた土木構造物がコンテクストとしてあって、その圧倒的なコンテクストと建物の対比が面白い。その対比で建物が見えることが印象的でした。
藤崎|北九州の小倉の町歩かれましたか?
永山|まあなんとなく。
藤崎|現在、北九州市の商店街では一階には店舗があるけど、二階はガラガラで空き家状態で、これに関してとても問題視しています。それをどうにかしようとtonicaでも提案をしようと思っています。リノベーションは再解釈と今日のレクチャーの中でもおっしゃっていたのですが、空き家の問題についてはどう思われますか?
永山|倉方さんが言ったのは何かする場所がまだ残っているので、何か自分たちがいいアイディアを持ち寄れば何かできるということ。場所があることをポジティブに考える。問題だからそれをやるという衝動は大切だけど、何かできる可能性はまだあるのでそれにむけて何かやることはいい事と思う。 さっき実は話していたのは、現在は経済が良くない状況。だから、みんなが経済だけではなく根本的な問題に取り組もうとしている。そういう意味では経済性はなくても面白いことを勝手にやってくれるのだったら、どうぞという流れもこれから出てくると思う。やりたいことができると思う。学生がはたらきかけることはいいんじゃない?経済がいい時はそういった事にデベロッパーが入ってきて、どうにか経済に結び付けようとするシステムをつくろうとしている傾向があるが、今は誰もうごかず、とりあえずそのまま触らないでおこうとしている。逆にそんな時代だからこそ、そこに学生が勢いをもって入っていくきっかけがあると思う。だからポジティブに見ていくと、今は経済性だけでなく長い目で見たときの何か種まきの時期。これを味方につけていけばいいと思う。
穴井|最後に学生へ向けて、メッセージをお願いします。
永山|自分がいる場所や取り巻いている状況をいかに観察できるかがけっこう重要だと思う。さっき話した(レクチャーやこのインタビュー中の内容)色々な要素を私は別に自分のなかで生みだしたのではなくて、発見している。いろんな段階で。だからそれはすごいアンテナをはってよくよく見る。世の中を。 今情報は多いけど学生はリファレンス(参照という意味)の仕方が下手だと思う。 いっぱいネットには面白い映像があるけど、ただ流れているものとしてとらえている。 一日一個面白い画像をピックアップしてそれに対して解釈するっていうのを実は自分が教えている生徒にはやらせているの。それは自分で情報を選びとって類型化して自分に対して次のヒントになる材料に変えていくという作業の事。情報の量は圧倒的に昔より多いわけだから、いくらでもアイディアはそこから出てくると思う。それをただ受け止めるのではなく解釈して、私はよく言うのだけど、それを材料に分解して自分の引き出しに入れておくと細かくなった材料は次に使いやすい。これが解釈するという事だと思う。
藤崎|今の話を受けて、そういった自分の気になる情報を選びとるという作業を、実はtonicaで街に出てリサーチをしようと思っています。いろんな情報がある中で自分で歩いて自分の気になる事を選んで記録に取るという事をやろうとおもっていて今日はお話を聞いていてとても後押しされた感じがしました。
永山|それはいいことだと思う。
穴井・藤崎|本日はありがとうございました。